15 虹彩離断 (こうさいりだん)

1 眼の仕組みと後遺障害について
2 眼瞼=まぶたの外傷
3 外傷性眼瞼下垂
4 動眼神経麻痺
5 ホルネル症候群
6 外転神経麻痺
7 滑車神経麻痺
8 球結膜下出血
9 角膜上皮剥離
10 角膜穿孔外傷
11 前房出血
12 外傷性散瞳
13 涙小管断裂
14 外傷性虹彩炎
15 虹彩離断
16 水晶体亜脱臼 
17 水晶体脱臼、無水晶体眼
18 外傷性白内障
19 眼窩底破裂骨折
20 視神経管骨折
21 硝子体出血
22 外傷性網膜剥離 
23 網膜振盪症
24 外傷性黄斑円孔
25 眼底出血 網膜出血・脈絡膜出血
26 眼球破裂
27 続発性緑内障 

15-1

茶目=虹彩が断裂しています。

鈍的外傷により、虹彩が離断されたもので、ほとんどで、前房出血を伴います。

瞳孔は、正円をしていますが、離断した虹彩に引っ張られて、不整形となります。
茶目の全周が離断すると、外傷性無虹彩症といいます。
外傷性虹彩炎よりは重傷で、視力低下、まぶしさ=羞明や眼圧の上昇などの症状が現れます。

視力、眼圧、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などが実施され、外傷性虹彩炎、高眼圧、硝子体出血、網膜剥離などの合併症の有無を確認し、治療は、散瞳薬、ステロイド薬の点眼で炎症を鎮め、高眼圧に対しては、点眼および内服治療が行われています。
大きな離断では、瞳孔偏位や多瞳孔症も予想され、単眼複視や眩輝、羞明の症状が出現します。
虹彩離断は、しばしば隅角後退を伴い、緑内障や前房出血の原因ともなっています。

著しい複視、眩輝、瞳孔の不整形を生じている大きな剥離、離断では、まぶしさと視界の改善を目的に、虹彩剥根部の縫合術が行われています。

※隅角検査
隅角とは、正面から見えない、角膜と虹彩の根元が交わる部分であり、細隙灯顕微鏡で検査します。
隅角には、眼圧を調節する房水の排出口があり、隅角検査は、緑内障を診断する上で欠かせない検査となっています。
外傷性虹彩離断では、隅角が後退するリスクがあり、眼圧亢進は、隅角後退を原因としています。
※房水 眼内組織に栄養を運ぶ液体を房水と呼んでいます。

※多瞳孔症

15-2

多瞳孔症=重瞳(ちょうどう)は、1つの眼球に、瞳が2つ認められることです。

交通事故、目の鈍的外傷により、虹彩離断が悪化したとき、多瞳孔症になることがあります。
モノが二重に見える支障が生じ、治療には外科手術が必要となります。

虹彩離断における後遺障害のポイント

1)外傷性虹彩炎について

軽度なものが多く、後遺障害を残すことは稀ですが、虹彩離断となると、かなり高い確率で、視力低下、複視、まぶしさ、瞳孔不整形の後遺障害を残しています。
まぶしさ=羞明については、
瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明により労働に支障を来すものは、単眼で12級相当、両眼で11級相当が認定されることが予想されます。

瞳孔の対光反射は認められるが不十分であり、羞名を訴え労働に支障を来すものは、単眼で14級相当、両眼で12級相当が認定されることが予想されます。 いずれも、対光反射検査で立証します。

2)視力低下について

視力は、万国式試視力表で検査します。
等級表で説明する視力とは、裸眼視力ではなく、矯正視力のことです。
矯正視力とは、眼鏡、コンタクトレンズ、眼内レンズ等の装用で得られた視力のことです。
ただし、角膜損傷等により眼鏡による矯正が不可能で、コンタクトレンズに限り矯正が出来る場合は、裸眼視力で後遺障害等級が認定されています。

眼の直接の外傷による視力障害は、前眼部・中間透光体・眼底部の検査で立証します。

15-315-4
スリット検査        直像鏡

前眼部と中間透光体の異常は、スリット検査で調べます。
眼底部の異常は、直像鏡で検査します。

視力検査は先ず、オートレフで裸眼の正確な状態を検査します。

例えば水晶体に外傷性の異常があれば、エラーで表示されるのです。
その後、万国式試視力検査で裸眼視力と矯正視力を計測します。

15-5

オートレフ

前眼部・中間透光体・眼底部に器質的損傷が認められる場合、つまり、眼の直接の外傷は、先の検査結果を添付すれば後遺障害診断は完了します。

3)複視について

複視には、正面視と左右上下の複視の2種類があるのですが、検査には、ヘスコオルジメーターを使用し、複像表のパターンで判断します。

15-6

15-7

ヘスコオルジメーター

正面視の複視は、両眼で見ると高度の頭痛や眩暈が生じるので、日常生活や業務に著しい支障を来すものとして10級2号の認定がなされています。

左右上下の複視は、正面視の複視ほどの大きな支障はありませんが、軽度の頭痛や眼精疲労は認められるので、13級2号が認定されることが予想されます。

4)瞳孔の不整形について

顔面の醜状障害として、後遺障害を申請することができます。
視力低下、複視、まぶしさなどで認定される等級と比較し、いずれか上位を選択することになります。顔面の醜状として、9級16号以上が見込めるときは、そちらを選択することになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です