3 頚椎症性脊髄症

 

頚椎は、18歳頃から、年齢とともに変化・変性していきます。
具体的には、椎間板の水分が少しずつ蒸散し、弾力を失って座布団の役割が果たせなくなり、椎骨同士が直接的に擦れ合って変形し、骨の配列の形が変化・変性してくるのです。
頚椎に年齢的な変化・変性が起こることを頚椎症、変形性頚椎症と呼ぶのですが、このことは、誰にでも、平等に起こることであり、変性自体は疾患ではありません。
ところが、変形性頚椎症の進行により、脊髄や神経根が圧迫され、痛み、痺れ、麻痺が出てくると、頚椎症性脊髄症あるいは頚椎症性神経根症という傷病名、疾患となります。
頚椎の中には、脊髄・中枢神経と神経根・末梢神経が通っています。
脳から脊髄が下行し頚椎の中に入り、神経根を介して手に神経が出て行きます。
あるいは、脊髄は頚椎を走行して、足の方へ下行していきます。
頚椎症性神経根症では、脊髄から外へ出てきた神経根という神経が圧迫されるために、手の痺れ、手の痛み、頚部~肩、腕、指先にかけての痺れや疼痛、そして、手の指が動かしにくいなどといった、上肢や手指の麻痺の症状が出てきます。
脊髄は圧迫されていないので、上肢の症状だけが出現します。
ところが、頚椎症性脊髄症では、脊髄が圧迫されるので、圧迫部位より下の手・足の症状、箸が持ちにくい、字が書きにくい、ボタンが留めにくいなど、手指の巧緻運動が困難となり、下肢が突っ張って歩きにくい、階段を降りるとき足ががくがくする、上肢の筋萎縮、脱力、上下肢および体幹の痺れ、症状がさらに進行すると膀胱直腸障害も出現します。
左受傷時のMRIでは、C4/5/6/7でヘルニアが脊髄を圧迫しています。
右術後のMRIでは、脊髄の流れが保たれています。
右のMRIでは、片開き式椎弓形成術が実施されています。
ハイドロキシアパタイトのスペーサーにより、脊柱管が拡大されています。
頚椎症性神経根症では、ほとんどで保存療法が選択されています。
痺れに対してはリリカが処方され、疼痛が強いときは、ステロイドホルモンの内服が投与されます。
就寝時には、頚部を前屈させる枕を使用、頚部を後屈させないように矯正します。
安静加療と内服で、症状は徐々に改善していきます。
頚椎症性脊髄症では、手術が選択されます。
手術は、前方除圧固定術が一般的ですが、MRIで3ヵ所以上の広い範囲に脊髄の圧迫が認められるとき、脊柱管がやや狭まっているときは、後方からの椎弓形成術が行われています。

頚椎症性脊髄症における後遺障害のポイント

例えば、3椎以上の頚椎に、椎弓形成術を受けたものは、11級7号が認定されます。
脊髄症状に改善がなければ、神経系統の機能障害で9級10号、7級4号が認定され得ます。
なお、頚椎の変性が大きく、疾患に相当する変形性頚椎症であると診断されたときには、示談交渉では、民法722条2項が類推適用され、素因減額の対象となります。

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