33 肉離れ、筋違いと捻挫、腸腰筋の出血、腸腰筋挫傷(ちょうようきんざしょう)
18 膝関節の仕組み
19 膝関節内骨折 𦙾骨顆部骨折 (けいこつかぶこっせつ)
20 𦙾骨と腓骨の働き 腓骨は役目を果たしているのか
21 𦙾骨顆間隆起骨折 (けいこつかかんりゅうきこっせつ)
22 膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)
23 膝蓋骨脱臼 (しつがいこつだっきゅう)
24 膝蓋骨骨軟骨骨折(しつがいこつこつなんこつこっせつ)・スリーブ骨折
25 膝離断性骨軟骨炎 (しつりだんせいこつなんこつえん)
26 膝蓋前滑液包炎 (しつがいぜんかつえきほうえん)
27 膝窩動脈損傷 (しつかどうみゃくそんしょう)
28 腓骨骨折 (ひこつこっせつ)
29 𦙾・腓骨骨幹部開放性骨折 (けい・ひこつこつかんぶかいほうせいこっせつ)
30 下腿のコンパートメント症候群
31 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)
32 腓腹筋断裂(ひふくきんだんれつ)、肉離れ
33 肉離れ、筋違いと捻挫、腸腰筋の出血、腸腰筋挫傷(ちょうようきんざしょう)
34 半月板損傷 (はんげつばんそんしょう)
肉離れ、筋違いの正しい傷病名は、筋挫傷です。
筋挫傷とは、筋肉や腱が打撃や無理に引き伸ばされることで生じる外傷です。
筋肉組織をやや伸ばした軽度なもの、組織が完全断裂する重度なものまで、拡がりがあります。
※腱とは、筋肉を骨に付着させる組織のことです。
交通事故では、転倒時の打撲などで筋肉を損傷し、筋肉の腫れや内出血が起こります。
打撲部の痛み、腫れ、圧痛があり、太ももの前の筋、大腿四頭筋であれば、膝の屈曲が制限され、大腿の後部の筋、ハムストリングスであれば、膝の伸展が制限、ふくらはぎの筋、腓腹筋であれば、足関節の背屈が制限されます。
受傷機転、損傷した筋肉の圧痛部位から、確定診断が行われています。
損傷のレベル、範囲、血腫の存在を確認するには、エコー検査やMRIが有用です。
さて、捻挫とは、靭帯の外傷を意味しています。
靭帯は骨と骨をつないでいる組織で、関節内に存在しています。
靭帯には、関節が正常範囲を越えて曲がる、伸ばされることのないように安定させる役割があります。
例えば、足首の外側の関節には、3本の靭帯があります。
この靭帯は、足部が前に突出したり、内側に曲がり過ぎることのないようにシッカリとつなぎ止めていますが、外側からの着地で、無理に体重が掛かると、靭帯だけでは支え切れなくなって、伸びる、断裂することになり、これを足関節捻挫と呼んでいます。
このような靱帯の外傷は、肘や膝など体内の他の関節でも発生しています。
発生直後から痛みのために歩行が困難となります。
損傷を受けた筋の部位に圧痛があり、ハムストリングスでは、膝の屈曲運動で抵抗を加えると痛みが増強し、ハムストリングスを伸ばすような動作でも、痛みが強くなります。
発症機転、損傷筋の圧痛部位から損傷筋の診断をします。
損傷程度や範囲、血腫の存在の判断には超音波検査やMRIが有用です。
受傷直後は、アイシングと、伸縮包帯で圧迫し、損傷を最小限に押さえ込みます。
3~5日を経過、痛みが軽くなれば、患部を暖め、ストレッチング運動により、筋の拘縮を予防し、関節の屈伸動作のリハビリ療法が行われます。
再発を繰り返すことがあり、慎重に対応する必要があります。
腸腰筋の出血、腸腰筋挫傷
交通事故では、自転車、バイクからの転倒による打撲を原因としています。
腸腰筋は、腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉群、大腰筋と腸骨筋の2つの筋肉で構成されています。
内臓と脊椎の間に存在し、主として、股関節を屈曲させる働きをしていますが、同時に、腰椎のS字型を維持する機能も併せ持っています。
腰椎椎体骨と大腿骨の間に腸腰筋と呼ばれる大きな筋肉があります。
腸腰筋挫傷による出血は、股関節〜下腹部の痛み、足を伸ばせないなどの症状が出現します。
右の腸腰筋出血では、右下腹部痛により、急性虫垂炎と間違えられることがあります。
出血付近の神経を圧迫し、下肢に神経障害や知覚麻痺、痺れの症状をきたすこともあります。
大きな筋肉であることから、大量出血が認められることもあります。
出血性ショックに陥れば、血圧低下、貧血が発生します。
XP、CT検査により、腸腰筋内の高濃度吸収域(出血)、低濃度吸収域(血腫)を確認することができるので、比較的容易に診断されます。
治療は、保存的に、再出血防止の為にベッド上安静が指示されています。
腰腸筋挫傷における後遺障害のポイント
1)肉離れ、筋違いで後遺障害を残すことは、通常は考えられません。
ところが、腰腸筋挫傷では、過去に12級13号、12級7号の後遺障害を残すことがあります。
2)筋肉に対する打撲の程度が大きいと、深く広範囲に内出血が発生します。
内出血が発生した筋肉内では、組織の修復活動、つまり細胞の増殖が行なわれるのですが、この修復活動が過剰に進むと、筋肉が固くなり、筋肉同士が癒着することがあります。
その結果、筋肉が伸びにくくなったり、収縮機能が落ちたり、関節の動きに制限が生じるのです。
筋肉の出血は、筋肉を覆っている筋膜と筋肉の間、あるいは筋肉の中で発生しています。
出血後の血腫は筋肉を圧迫し、運動痛や、出血量が多ければ腫れてきます。
筋肉内出血では、筋肉自体はもちろんのこと、筋肉周囲の神経や血管を圧迫することが予想され、筋肉自体の圧迫では、筋肉に引きつりが生じ、筋肉の長さが変わることにより、関節自体に外傷がなくても関節の可動域に制限が生じます。
神経圧迫では、その神経に麻痺が生じ、血管圧迫では、手足の先に血行障害を起こします。
これらが長時間継続することで、後遺症を残すのです。
臀部、大腿部、肩の筋肉は、大きな筋肉であり、出血の量も問題となります。
出血性ショックに陥れば、血圧低下、貧血が発生します。