31 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)

18 膝関節の仕組み
19 膝関節内骨折 𦙾骨顆部骨折 (けいこつかぶこっせつ)
20 𦙾骨と腓骨の働き 腓骨は役目を果たしているのか
21 𦙾骨顆間隆起骨折 (けいこつかかんりゅうきこっせつ)
22 膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)
23 膝蓋骨脱臼 (しつがいこつだっきゅう)
24 膝蓋骨骨軟骨骨折(しつがいこつこつなんこつこっせつ)・スリーブ骨折
25 膝離断性骨軟骨炎 (しつりだんせいこつなんこつえん)
26 膝蓋前滑液包炎 (しつがいぜんかつえきほうえん)
27 膝窩動脈損傷 (しつかどうみゃくそんしょう)
28 腓骨骨折 (ひこつこっせつ)
29 𦙾・腓骨骨幹部開放性骨折 (けい・ひこつこつかんぶかいほうせいこっせつ)
30 下腿のコンパートメント症候群
31 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)
32 腓腹筋断裂(ひふくきんだんれつ)、肉離れ
33 肉離れ、筋違いと捻挫、腸腰筋の出血、腸腰筋挫傷(ちょうようきんざしょう)
34 半月板損傷 (はんげつばんそんしょう)

 

交通事故で、膝関節のプラトー骨折、脱臼、前・後十字靱帯や半月板を損傷した場合、示談締結後の2次性疾患として、変形性膝関節症が想定されます。

正常なもの

初期             進行期

 

初期では、軟骨がすり減り、間隔が狭くなる。
進行期に至ると、骨棘形成が進み、骨同士が直接にぶつかる。

正常な膝関節の表面は、軟骨で覆われています。
軟骨の働きにより、衝撃を和らげ、関節の動きは滑らかです。
そして、滑膜から分泌される関節液により、大腿骨はアイススケートよりも滑らかに滑走しています。
関節液は、軟骨の成分であるヒアルロン酸を含んだ粘りのある液体で、膝関節の潤滑油と、軟骨に対する栄養補給の役割を果たしています。

変形の初期段階では、関節軟骨の磨耗は軽度なもので、自覚症状は、ほとんどありません。
軟骨の磨耗が、あるレベルに進行する中期となると、膝の曲げ伸ばし、立ち上がり、歩行中の膝にかかる負担が増加し、軟骨、半月板の変性による刺激によって、関節炎を発症します。
膝蓋骨周辺に水がたまり、膝が腫れ、膝を曲げ伸ばし動作での疼痛や可動域制限が生じます。

進行期に入ると軟骨の磨耗がさらに進み、関節の土台の骨である軟骨下骨が露出し、骨そのものの変形である骨棘形成が見られます。
この段階に至ると、強い動作痛と大きな可動域制限により、日常生活は、大きく障害されます。

変形性膝関節症となると、膝の痛みのため、あまり歩かなくなり、脚の筋肉が衰えていきます。
膝の筋肉が衰えると、さらに、膝に負担がかかり、変形性膝関節症は進行するのです。

これらの悪循環を絶つには?

摩耗した関節軟骨を元の完全な形に修復する方法は、現在のところ、ありません(平成26年現在)。
変形性膝関節症の治療は、痛みをとり、膝が完全に曲がりきらない状態や伸びきらない状態を改善して、膝の機能を高めることを目指して行われます。
治療方法は、保存的には、薬物療法、温熱・冷却療法、運動療法の3つの療法が基本となります。
しかし、これらは根治療法ではなく、対症療法です。
これらの治療でも痛みが改善されないときには、以下の手術が実施されています。

①関節鏡視下郭清術 デブリードマン
中期の変形性に対して選択される手術で、膝関節に小さなカメラを入れ、変形軟骨を切除し、半月板を縫合、切除する手術です。膝に小さな穴を数ヶ所開けるだけで、負担も少なく入院期間も短いのですが、交通事故による2次性疾患では、変形性が進行していることが多く、条件に適合する被害者の方は少ない状況です。

②高位𦙾骨骨切術
O脚を矯正する手術で、ほぼ完治しますが、長期入院が必要で回復には半年近くを要します。
手術を受けられる人は限られてくるのが弱点です。

 

③人工膝関節置換術
変形性膝関節症が進行し、痛みで日常生活が困難になったときに選択する手術です。
高齢者でも受けられますが、まだ、耐久性が証明されていないこと、可動域が狭くなり正座ができなくなることなどがデメリットです。

変形性膝関節症における後遺障害のポイント

1)変形性膝関節症では、示談から早くて3年、遅ければ10年近く経過しての手術となります。
この疾患は、交通事故後の2次性疾患ですから、新たな後遺障害として賠償対象になり得ます。
例えば、人工関節置換では、8級7号、もしくは10級11号が認定されることになり、前回の認定等級との差額を請求することになります。

2)年数を経過しての掘り起こしは、大変面倒なものです。
膝関節のプラトー骨折、脱臼、複合靱帯損傷などで、将来、変形性膝関節症が懸念されるときは、交通事故に長けた弁護士に委任して示談締結することをお勧めします。

示談書には、「今後、乙に本件事故が起因する新たな後遺障害が発現したる際は、甲乙間において、別途協議を行うものとする。」 旨の文言の記載が必要です。

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