29 𦙾・腓骨骨幹部開放性骨折 (けい・ひこつこつかんぶかいほうせいこっせつ)
18 膝関節の仕組み
19 膝関節内骨折 𦙾骨顆部骨折 (けいこつかぶこっせつ)
20 𦙾骨と腓骨の働き 腓骨は役目を果たしているのか
21 𦙾骨顆間隆起骨折 (けいこつかかんりゅうきこっせつ)
22 膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)
23 膝蓋骨脱臼 (しつがいこつだっきゅう)
24 膝蓋骨骨軟骨骨折(しつがいこつこつなんこつこっせつ)・スリーブ骨折
25 膝離断性骨軟骨炎 (しつりだんせいこつなんこつえん)
26 膝蓋前滑液包炎 (しつがいぜんかつえきほうえん)
27 膝窩動脈損傷 (しつかどうみゃくそんしょう)
28 腓骨骨折 (ひこつこっせつ)
29 𦙾・腓骨骨幹部開放性骨折 (けい・ひこつこつかんぶかいほうせいこっせつ)
30 下腿のコンパートメント症候群
31 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)
32 腓腹筋断裂(ひふくきんだんれつ)、肉離れ
33 肉離れ、筋違いと捻挫、腸腰筋の出血、腸腰筋挫傷(ちょうようきんざしょう)
34 半月板損傷 (はんげつばんそんしょう)
医学的には、𦙾骨顆部の最大横径の平方に含まれる部分を近位端、𦙾骨遠位部の最大横径の平方に含まれる部分を遠位端、それらを除く部位が骨幹部と定義されています。
ここでは、後遺障害を検証する観点から、ちょうど中央部を骨幹部として捉えています。
交通事故における下腿骨骨折の中では、最も多発している部位で、𦙾骨の単独骨折、𦙾・腓骨の骨折、腓骨の単独骨折の3種類があります。
𦙾骨は皮膚の直下にあり、骨が皮膚を突き破る、開放性損傷を起こしやすい特徴があります。
①𦙾骨の下、3分の1の骨折では、下方の血流が停滞し、骨癒合が遅れ、偽関節を形成する。
②骨皮質が多く、海綿骨が少ないので骨癒合が得られにくい。
※骨折が治癒するには、骨折部周囲の血流が豊富なことが要件ですが、𦙾骨の下半分は、筋肉が腱に移行する部位で、骨周囲の血流が乏しいのです。
①②を理由として、𦙾・腓骨骨幹部骨折は難治性です。
直後の症状は、激痛、腫脹で顔面蒼白状態となり、下肢はぐらつき、立位は不可能な状態です。
単純XP撮影で、容易に診断することができます。
開放骨折では、骨折した骨の一部が、皮膚を突き破って飛び出しています。
基本的に、他の骨折と同じ非開放性で、転位のないときは、整復の上、ギプス固定がなされます。
※転位とは、骨折部のズレのことです。
転位が大きければ、通常の整復では骨癒合が期待できません。
そこで、かかとの骨にキルシュナー鋼線を入れ、その鋼線を直接牽引します。
その他、皮下骨折で直接牽引ができないような複雑な骨折の場合、キュンチャー髄内固定や、ネジ・プレートにより、観血的に治療をおこないます。
治療は、圧倒的に手術による内固定が選択されています。
①のキルシュナー固定は骨膜を傷つけることがなく、骨癒合が遷延しない利点があります。
②のAOプレートは強固な固定が得られますが、偽関節の可能性を残します。
これ以外にも、エンダー釘による固定も行われています。
大半の症例で、骨癒合が完了し、抜釘するまでに1年近くを要しています。
高度の粉砕骨折や開放性骨折は、安定性が得られるまでの期間について、上図の創外固定器が使用されています。
𦙾骨の固定に際しては、以下のようにネジで固定します。
後遺障害としては、下腿の短縮、偽関節、腓骨神経麻痺やコンパートメント症候群等が予想されます。
※骨延長とイリザロフ創外固定器
開放骨折では、骨が皮膚の外に出ており、感染を起こす可能性が非常に高くなります。
そのため、骨折部位に直接、プレートや髄内釘を接触させると、感染を起こし化膿性骨髄炎を引き起こし、切断の可能性も予想されます。
ここでは下腿骨の治療に有効なのが、イリザロフ式創外固定です。
骨を伸ばしたり、骨幅を増やしたり、どのような変形でも3次元的に矯正できるのがイリザロフ式創外固定器なのです。
𦙾・腓骨骨幹部開放性骨折における後遺障害のポイント
1)本症例の後遺障害は、下腿骨の短縮、偽関節、変形癒合、合併症としてコンパートメント症候群、稀に腓骨神経麻痺があります。
2)下肢の短縮障害では、3段階の評価です。
下肢の短縮障害による後遺障害等級 | |
8級5号 | 一下肢を5cm以上短縮したもの |
10級8号 | 一下肢を3cm以上短縮したもの |
13級8号 | 一下肢を1cm以上短縮したもの |
本件は、下腿骨の骨折ですから、左右の膝関節~足関節までのXPの比較で短縮を立証します。
3)仮関節とは。偽関節とは違うの?
𦙾骨・腓骨の仮関節による後遺障害等級 | |
7級10号 | 𦙾骨および腓骨の両方に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級9号 | 𦙾骨に仮関節を残すもの |
12級8号 | 腓骨に仮関節を残すもの |
ほとんどの整形外科医は、仮関節ではなく、偽関節と呼びますが、意味するところは同じです。
医学では、骨の一部の骨癒合が得られていないとき、偽関節と診断しますが、
後遺障害では、
①骨折部の周囲に、骨癒合が全く認められないこと
②骨折部に、異常可動性が認められること
これらの2つの要件を満たしているときに、仮関節と判定しています。
医師の診断と後遺障害の認定基準に乖離が生じていることを承知しておかなければなりません。
右𦙾骨の骨折部に仮関節が認められるが、異常可動性がない。
プレート固定がなされているときは、この状況が予想されます。
もちろん、抜釘すれば、骨折部は仮関節で異常可動性を示すことになり、抜釘はできません。
抜釘前であれば、異常可動性がなくとも、仮関節は認められます。
3DCTの撮影で、骨折部を360°回転させれば、立証できます。
なお、下肢の短縮障害と仮関節は、併合の対象です。