10 ステム周囲骨折

5 股関節の仕組み
6 股関節後方脱臼・骨折 (こかんせつこうほうだっきゅう・こっせつ)
7 股関節中心性脱臼 (こかんせつちゅうしんせいだっきゅう)
8 外傷性骨化性筋炎 (がいしょうせいこっかせいきんえん)
9 変形性股関節症 (へんけいせいこかんせつしょう)
10 ステム周囲骨折
11 股関節唇損傷 (こかんせつしんそんしょう)
12 腸腰筋の出血、腸腰筋挫傷 (ちょうようきんざしょう)

 

高齢化社会となり、材質の改良もあって、股関節などを人工関節に置換する人が増加しています。

 

それに伴い、人工関節周囲の骨折が増えているのです。

多くは、高齢者で、転倒を原因としたものですが、交通事故による骨折も、増加傾向です。

 

交差点で信号待ち停止中では、右足は軽くブレーキを踏んでいます。

この状態で、後方から追突を受けると、右股関節には大きな衝撃が加わります。

右股関節が人工関節に場合、衝撃でステムが下方に沈下し、ステム周囲が骨折することがあります。

歩行者、バイクや自転車VS自動車の出合い頭衝突では、直接的な打撃を原因として、ステム周囲の骨折を発症しています。

 

ステム周囲骨折は、大腿骨で発症することが圧倒的です。

 

症状は、局所の疼痛、腫れ、変形などで、歩けなくなります。

XPやCT検査で確定診断が行われています。

骨折に対しては、固定術の実施ですが、人工関節が緩んでいるときは、人工関節の再置換術などが検討されることになり、画像検査では、骨折による人工関節の緩みも評価しなければなりません。

 

治療は、ほとんどの場合、手術が選択されます。

骨折に対しては、プレートやワイヤーによる固定が行われ、人工関節に緩みが生じているときは、人工関節の再置換術が選択されます。

粉砕骨折や、人工関節の緩みで骨量が不足しているときは、腸骨からの骨移植も行われています。

 

ステム周囲骨折における後遺障害のポイント

 

1)事故前から股関節は人工関節であり、10級11号の加重障害となります。

つまり、10級11号以上の等級が認定されない限り、後遺障害としての評価はありません。

 

2)粉砕骨折で、腸骨からの骨移植と人工関節の再置換術が行われたときは、再置換術後の股関節の可動域に注目しなければなりません。

股関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されているときは、股関節の用を廃したものとして8級7号、腸骨の変形で12級5号、併合7級となります。

ここから、加重の10級11号分を差し引くことになります。

 

3)股関節の可動域に制限が認められないときは、10級11号の既往歴に腸骨の変形12級5号を加えて、併合9級となり、ここから加重の10級11号を差し引くことになります。

 

4)人工関節に緩みが少なく、固定術のみが実施されたときは、ステムの沈下に伴う下肢の短縮に注目しなければなりません。

ステムが1cm以上沈下しているときは、短縮障害で13級8号が認定されます。

やはり、併合9級となり、ここから加重の10級11号を差し引くことになります。

 

5)被害者の方の多くが高齢者であり、糖尿病、腎疾患などで、再手術が困難も予想されます。

後遺障害の立証に困難が予想されます。

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