9 鎖骨骨折 (さこつこっせつ)

1 骨折の分類
2 脊柱の圧迫骨折
3 脊柱の圧迫骨折 変形障害
4 脊柱の圧迫骨折 運動障害
5 脊柱の破裂骨折
6 肋骨骨折
7 肋骨多発骨折の重症例 外傷性血胸
8 肋骨多発骨折の重症例 フレイルチェスト、Flail Chest、動揺胸郭
9 鎖骨骨折 (さこつこっせつ)
10 肩鎖関節脱臼 (けんさかんせつだっきゅう)
11 胸鎖関節脱臼 (きょうさかんせつだっきゅう)
12 肩甲骨骨折 (けんこうこつこっせつ)
13 骨盤骨折 骨盤の仕組み
14 骨盤骨折・軽症例
15 体幹骨・骨盤骨折・重症例

鎖骨骨折は、交通事故では、ムチウチに次いで多発しています。
自転車、バイクVS自動車の交通事故で、被害者の方が転倒して手・肘・肩などを打撲したときに、その衝撃が鎖骨に伝わって、鎖骨骨折を発症しています。
追突、出合い頭衝突、正面衝突では、シートベルトの圧迫で鎖骨が骨折することもあります。
鎖骨の横断面は、中央部から外側に向かって三角形の骨が、薄っぺらく扁平して行きます。
三角形から扁平に骨が移行する部位が鎖骨のウィークポイントであり、鎖骨骨折の80%が、その部位で発生しています。この部位は、より肩関節に近いことから、遠位端骨折と呼ばれています。
その次の好発部位は、肩鎖関節部です。
肩鎖靱帯が断裂することにより、肩鎖関節は脱臼し、鎖骨は上方に飛び上がります。
治療は、ほとんどが手術によらず、固定による保存療法が選択されています。
胸を張り、肩をできる限り後上方に引くようにして、クラビクルバンドを装着、固定します。

クラビクルバンド

一般的には、成人で4~6週間の固定で、骨折部の骨癒合が得られます。

鎖骨骨折における後遺障害のポイント

1)鎖骨は体幹骨であり、体幹骨の変形として12級5号の認定が予想されます。
裸体で変形が確認できることが、認定の要件です。
鎖骨の変形では、骨折部に運動痛があるか、否かが重要なポイントになります。
体幹骨の変形による12級5号では、骨折部の疼痛も周辺症状として含まれてしまいます。
つまり、疼痛の神経症状で12級13号が認定され、併合11級となることはないのです。
変形に伴う痛みは、鎖骨骨折部のCT、3D撮影で骨癒合状況を明らかにして、立証します。
2)鎖骨の遠位端骨折部の変形により、肩関節の可動域に影響を与えることが予想されます。
こうなると、鎖骨の変形以外に、肩関節の機能障害が後遺障害の対象となります。
となれば、骨折部位の変形をCT、3Dで立証しなければなりません。
左右差で、4分の3以下であれば、12級6号が認定され、先の変形による12級5号と併合され、併合11級が認定されることになります。

部位 主要運動 参考運動
肩関節 屈曲 外転 内転 合計 伸展 外旋 内旋
正常値 180° 180° 0° 360° 50° 60° 80°
8級6号 20° 20° 0° 40°
10級10号 90° 90° 0° 180° 25° 30° 40°
12級6号 135° 135° 0° 270° 40° 45° 60°
主要運動が複数ある肩関節の機能障害については、屈曲と、外転+内転のいずれか一方の主要運動の可動域が、健側の2分の1以下に制限されているときは、肩関節の機能に著しい障害を残すものとして10級10号、同じく、4分の3以下に制限されているときは、肩関節の機能に障害を残すものとして12級6号が認定されています。
屈曲と、外転+内転が、切り離して認定されていることに注目してください。

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