22 椎骨脳底動脈血行不全症 (ついこつのうていどうみゃくけっこうふぜんしょう)
1 背骨の仕組み
2 外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)
3 外傷性頚部症候群の神経症状について
4 バレ・リュー症候群と耳鳴り、その他の障害について
5 腰部捻挫・外傷性腰部症候群
6 外傷性腰部症候群の神経症状
7 腰椎横突起骨折 (ようついおうとっきこっせつ)
8 上腕神経叢麻痺 (じょうわんしんけいそうまひ)
9 中心性頚髄損傷
10 環軸椎脱臼・亜脱臼 (かんじくついだっきゅう・あだっきゅう)
11 上位頚髄損傷 C1/2/3 (じょういけいずいそんしょう)
12 横隔膜ペーシング
13 脊髄損傷
14 脊髄不全損傷=非骨傷性頚髄損傷
15 脊髄の前角障害、前根障害
16 脊髄の後角障害、後根障害
17 バーナー症候群
18 脊髄空洞症
19 頚椎症性脊髄症
20 後縦靱帯骨化症 OPLL
21 腰部脊柱管狭窄症
22 椎骨脳底動脈血行不全症 (ついこつのうていどうみゃくけっこうふぜんしょう)
23 腰椎分離・すべり症
24 胸郭出口症候群 (きょうかくでぐちしょうこうぐん)
25 複合性局所疼痛症候群 (ふくごうせいきょくしょとうつうしょうこうぐん) CRPS
26 低髄液圧症候群=脳脊髄液減少症= CSFH (のうせきずいえきげんしょうしょう)
27 梨状筋症候群 (りじょうきんしょうこうぐん)
28 線維筋痛症 (せんいきんつうしょう)
強い耳鳴り・難聴・眩暈の訴えをされる頚部捻挫の被害者の方が、稀にいらっしゃいます。
椎骨動脈は鎖骨下動脈から分岐し、第6頚椎から第1頚椎の横突孔を走行して、頭蓋内に流入、内耳・小脳・脳幹等の平衡感覚や聴覚に影響を持つ部位に血液を供給しています。
交通事故による椎骨動脈の直接の損傷、周囲からの圧迫、あるいは動脈壁に分布して血管の収縮・拡張を調整する頚部交感神経を損傷し、血液の流入先に血行障害を起こしたときは、耳鳴り・難聴・眩暈が発生しても不思議ではありません。
本来は、椎骨動脈造影検査で狭窄や圧迫が確認されて、この病名が立証されたことになるのですが、臨床では、眩暈、悪心、嘔吐、目のかすみ、上肢の痺れがあり、首を回転、過伸展したときに、これらの症状が出現するケースで、この傷病名が記載されることがあります。
椎骨動脈の血行障害は、動脈硬化による血管の狭窄、血栓による血管閉塞でも起こります。
軽度のものは先に説明した、バレ・リュー症候群でも、交感神経異常として認められています。
交通事故では、頚椎椎体の骨挫傷、横突起や棘突起の骨折など、頚部に相当大きなダメージを受けたときに、この傷病名が予想されます。
通常の頚部捻挫で、椎骨脳底動脈血行不全症は考えられません。
椎骨動脈造影検査では、動脈の一部が細くなっている、造影剤が見えなくなる所見が得られます。
損害保険料算出機構自賠責調査事務所は、頭部外傷を原因として、失調・眩暈および平衡機能障害が認められれば、3、5、7、9、12、14級の後遺障害等級が認定され得ます。
椎骨脳底動脈血行不全症における後遺障害のポイント
1)椎骨脳底動脈血行不全症の立証は、神経内科における椎骨動脈造影検査で行います。
椎骨動脈の血流低下が立証されたときは、耳鼻科で失調・眩暈・平衡機能障害の検査を受けて、眩暈などのレベルを立証します。
2)失調・眩暈及び平衡機能障害の後遺障害等級
失調・眩暈及び平衡機能障害の後遺障害等級
3級3号 生命の維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために終身労務に就くことができないもの
5級2号 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下し一般平均人の4分の1程度しか残されていないもの
7級4号 中程度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の2分の1以下程度に明らかに低下しているもの
9級10号 一般的な労働能力は残存しているが、眩暈の自覚症状が強く、かつ、他覚的に眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められるもの
12級13号 労働には差し支えがないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
14級9号 眩暈の自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの
3)先にも説明していますが、頭部外傷を原因とした失調・眩暈および平衡機能障害が後遺障害の対象とされています。
ところが、椎骨脳底動脈血行不全症は頚部の外傷であり、上記からは外れているのです。
この場合、非該当の結論も予想されます。