1 背骨の仕組み
2 外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)
3 外傷性頚部症候群の神経症状について
4 バレ・リュー症候群と耳鳴り、その他の障害について
5 腰部捻挫・外傷性腰部症候群
6 外傷性腰部症候群の神経症状
7 腰椎横突起骨折 (ようついおうとっきこっせつ)
8 上腕神経叢麻痺 (じょうわんしんけいそうまひ)
9 中心性頚髄損傷
10 環軸椎脱臼・亜脱臼 (かんじくついだっきゅう・あだっきゅう)
11 上位頚髄損傷 C1/2/3 (じょういけいずいそんしょう)
12 横隔膜ペーシング
13 脊髄損傷
14 脊髄不全損傷=非骨傷性頚髄損傷
15 脊髄の前角障害、前根障害
16 脊髄の後角障害、後根障害
17 バーナー症候群
18 脊髄空洞症
19 頚椎症性脊髄症
20 後縦靱帯骨化症 OPLL
21 腰部脊柱管狭窄症
22 椎骨脳底動脈血行不全症 (ついこつのうていどうみゃくけっこうふぜんしょう)
23 腰椎分離・すべり症
24 胸郭出口症候群 (きょうかくでぐちしょうこうぐん)
25 複合性局所疼痛症候群 (ふくごうせいきょくしょとうつうしょうこうぐん) CRPS
26 低髄液圧症候群=脳脊髄液減少症= CSFH (のうせきずいえきげんしょうしょう)
27 梨状筋症候群 (りじょうきんしょうこうぐん)
28 線維筋痛症 (せんいきんつうしょう)

事故外傷が発生すると、交感神経の緊張=反射が高まり、神経伝達物質、アドレナリンを放出、アドレナリンには血管を収縮させる作用があり、これにより出血を止めているのです。
さらに、四肢の血管は収縮し、腫脹を防止します。
外傷が治癒に向かうと、交感神経の反射は消失、正常な働きに戻ります。
では、交感神経反射が消失せずに続いたときはどうなるのでしょうか。
アドレナリンが放出され続けることにより、血流障害を起こします。
血液は全身の細胞に酸素と栄養を送り、老廃物や不要なものを回収しているのですが、血流障害により、細胞に必要な栄養は届かず、老廃物はたまる一方となります。
交感神経が緊張しているときは、副交感神経の働きは抑えられます。
副交感神経は、臓器や器官の排泄や分泌を担当しています。
便や尿の老廃物の排泄、ブドウ糖を利用するときに必要なインスリン、つまりホルモンや消化酵素やタンパク質の供給が著しく低下し、身体は循環不全を起こします。
白血球は、顆粒球+リンパ球+単球で構成されているのですが、交感神経優位のときは顆粒球が活躍しています。 顆粒球は血液の流れに乗り全身を巡り、体内に侵入した細菌や細胞の死骸を食べて分解し身体を守っているのです。
食事や休憩をしているときは、副交感神経優位となり、リンパ球が活躍しています。
交感神経の緊張状態が続くと、顆粒球が増え続けます。
顆粒球は活性酸素を放出し、その強力な酸化力で細胞を殺傷することになります。
交感神経の暴走により、
①血流障害
②排泄・分泌機能の低下
③活性酸素による組織破壊
が起こり、これらの状況が長期間続いたことにより、灼熱痛を生じるものが、RSDと呼ばれていました。
ところが、交感神経ブロック療法を行っても、全く無効の症例が報告されており、交感神経の関与しない痛みが存在することが明らかになってきました。
そこで、1994年に世界疼痛学会、IASPでこれらの類似した症状を呈する疾患をCRPS、複合性局所疼痛症候群と呼ぶことになりました。
1)CRPS、2つの分類
①CRPSタイプⅠ=RSD、反射性交感神経性ジストロフィーと診断されるもの
捻挫、打撲の軽微な外傷で、神経損傷が不明確であるにもかかわらず、難治性疼痛を訴えるもの
②CRPSタイプⅡ=カウザルギーと診断されるもの
創傷、脱臼や骨折の神経損傷が明らかな外傷で、難治性疼痛を訴えるもの
2)診断基準
A 国際疼痛学会CRPS診断基準
TypeⅠ
①CRPSの誘因となる侵害的な出来事、あるいは固定を必要とするような原因があったこと。
②持続する疼痛があるか、アロデニア、あるいはピンプリックの状態があり、その疼痛が始まりとなった出来事に不釣り合いであること。
③経過中、疼痛部位に、浮腫、皮膚血流の変化、あるいは発汗異常のいずれかがあること。
④疼痛や機能不全の程度を説明可能な他の病態がある場合、この診断は当てはまらない。
注意 診断基準②~④を必ず満たすこと。
TypeⅡ
①神経損傷があって、その後に持続する疼痛、アロデニアあるいはピンプリックのいずれかの状態があり、その疼痛が必ずしも損傷された神経の支配領域に限られないこと。
②経過中、疼痛部位に、浮腫、皮膚血流の変化、発汗異常のいずれかがあること。
③疼痛や機能不全の程度を説明可能な他の病気がある場合、この診断は当てはまらない。
注意 診断基準①~③を必ず満たすこと。
※アロデニア=通常では痛みを感じない刺激によって生じる痛み
※ピンプリック=安静時に悪化する痛覚過敏
B 厚生労働省CRPS判定基準
1)病期のいずれかの時期に、以下の自覚症状のうち3項目以上に該当すること
ただし、それぞれの項目内のいずれかの症状を満たせばよい。
①皮膚・爪・毛のうち、いずれかに萎縮性変化
②関節可動域制限
③持続性ないし不釣り合いな痛み、痺れたような針で刺すような痛み、知覚過敏
④発汗の亢進ないしは低下
⑤浮腫
2)診察時において、以下の他覚的所うち3項目以上に該当すること
①皮膚・爪・毛のうち、いずれかに萎縮性変化
②関節可動域制限
③アロデニアないしはピンプリック
④発汗の亢進ないしは低下
⑤浮腫
3)検査による立証
検査法・補助的診断法
①疼痛の程度 VAS(visual analog scale)、pain scale
②知覚測定 Neurometer(末梢神経検査装置)
③腫脹・浮腫の程度 周囲径の測定、圧痕の有無、指尖容積脈波(プレチスモグラフィー)
④発汗の程度 櫻井式測定紙
⑤皮膚の血流状態 サーモグラフィー、レーザードップラー検査
⑥骨萎縮の程度 単純 XP、三相性骨シンチグラフィー検査で骨破壊や骨形成のある部位を特定する
特にテグネシウムを静注して3時間後に撮影するdelayed image はRSDの立証に有意
⑦神経障害・筋肉の活動状態 手指のグリップ時の動作筋電図、肩関節外転時の筋電図等、バラエティに富んだ筋電図検査
4)CRPSの後遺障害等級
後遺障害等級別表Ⅱ CRPSの後遺障害等級
等級 内容
7 4軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの
9 10通常の労務に服することはできるが、疼痛によりときには労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
12 13通常の労務に服することはできるが、ときには労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの
CRPSタイプⅠ=RSD、反射性交感神経性ジストロフィーについては、
①関節拘縮
②骨萎縮
③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
これらの慢性期の主要な3つの症状が、いずれも健側と比較して明らかに認められるときに限って、カウザルギーと同じ基準が適用され、等級が認定されています。
CRPSについては、神経系統の機能または精神の障害の系列における評価を基本とするが、CRPS以外にも関節機能障害の原因所見がある場合等、関節機能障害としての評価が妥当であると捉えられるときは、関節機能障害として評価することも可能であるとされています。
なお、CRPSに伴う疼痛と関節機能障害は通常派生する関係にあることから、いずれか上位の等級で認定されています。
CRPSタイプⅠ=RSDで上記の要件を満たしていないとき、経過上、RSD特有の所見が確認でき、かつ、RSDに対するブロック療法等の治療を行った結果、症状固定時においても1つ以上のRSD特有の所見を残しているものは、別表Ⅱの12級13号が認定されます。
上記には至らないものの疼痛の残存が医学的に説明できるものは、別表Ⅱの14級9号が認定されています。
※RSD特有の所見には、上記の要件に加えて腫脹、発汗障害等の所見が含まれています。
なお、後遺障害等級認定時において、外傷後生じた疼痛が自然的経過によって消退すると認められるものは、後遺障害等級の認定対象とはなりません。