36 PCL(後十字靱帯)損傷 (こうじゅうじじんたいそんしょう)

35 ACL(前十字靱帯)損傷 (ぜんじゅうじじんたいそんしょう)
36 PCL(後十字靱帯)損傷 (こうじゅうじじんたいそんしょう)
37 MCL(内側側副靱帯)損傷 (ないそくそくふくじんたいそんしょう)
38 LCL(外側側副靭帯)損傷 (がいそくそくふくじんたいそんしょう)
39 PLS(膝関節後外側支持機構) (ひざかんせつこうがいそくしじきこう)の損傷
40 複合靭帯損傷 (ふくごうじんたいそんしょう)

ACL(前十字靱帯)とPCL(後十字靱帯)は、ともに膝関節の中にある靭帯で、大腿骨と𦙾骨をつなぎ、膝関節における前後の動揺性を防止している重要な靱帯です。

交通事故では膝をダッシュボードに打ちつけて発症することが多く、dashboard injuryと呼んでいますが、PCLだけの単独損傷はほとんどありません。
多くは、膝蓋骨骨折、𦙾骨顆部骨折、MCL損傷を伴いますので実に厄介な外傷です。

外力・衝撃などによって、運転席や助手席で膝を曲げた状態のままダッシュボードに膝を打ちつけ、𦙾骨が90°曲がったまま後方に押しやられ、後十字靱帯損傷となるのです。
同時に、膝蓋骨骨折・𦙾骨顆部骨折などに合併して生じることが多いのです。

後十字靭帯損傷は、前十字靭帯損傷と比べ、機能障害の自覚や痛みが少ないのが特徴です。
前十字靭帯損傷に比して、痛みや機能障害の自覚が小さいものの、痛みと腫れは出現します。
訴えは、膝蓋骨骨折等の痛みが中心となります。

この治療を得意としているのは、整形外科、スポーツ外来で、専門医が配置されています。
ACL損傷に同じく、PCL損傷もテストによって診断をおこないます。
靭帯が切断されているときは、当然ながら、膝がぐらつくので、そのぐらつきの有無や特性により診断が行われています。

①posterior sagテスト

膝を90°屈曲すると、下腿の重みで𦙾骨が後方に落ち込みます。
仰向けで股関節を45°と膝を90°曲げます。
後十字靭帯断裂では、𦙾骨上端を後方に押すとぐらつきます。

上記のテストで大まかな診断が可能ですが、損傷のレベルを知るためには、単純X線写真、CTスキャン、関節造影、MRI等の検査を行います。
MRIがとても有効です。

②ストレスXP撮影

𦙾骨を後方に押し出し、ストレスをかけた状態でXP撮影を行います。
断裂がある場合、𦙾骨が後方に押し出されて写ります。
後十字靭帯損傷とは、靭帯が部分断裂したレベルであり、単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法の適用です。
膝を90°屈曲すると、下腿の重みで𦙾骨が後方に落ち込むのですが、これが10mm以上となると、後十字靱帯は断裂しており、再建術の適用となります。
自家組織のハムストリング腱、膝蓋腱などを編み込んで、アンカーボルトで留めるという高度な技術の必要な再建術が行われています。

手術となれば、膝の専門医のいる医大系の総合病院を選択しなければなりません。

PCL(後十字靱帯)損傷における後遺障害のポイント

後十字靱帯の損傷、断裂は、MRIで立証します。
動揺性は、ストレスXP撮影で、健側に比して○mmの動揺性が認められると、明確な記載を受けます。

下肢の動揺関節による後遺障害等級
8級7号 労働に支障があり、常時固定装具の装着を絶対に必要とする程度のものは、1関節の用を廃したものとして8級7号が認定
10級11号 動揺関節で労働に支障があるが、固定装具の装着を常時必要としない程度のもの
12級7号 動揺関節で通常の労働には固定装具の装着の必要がなく、重激な労働等に際してのみ必要のある程度のもの、習慣性脱臼および弾発膝を残すもの

後遺障害の立証には、必ずストレスXP撮影が必要となります。

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