35 ACL(前十字靱帯)損傷 (ぜんじゅうじじんたいそんしょう)
36 PCL(後十字靱帯)損傷 (こうじゅうじじんたいそんしょう)
37 MCL(内側側副靱帯)損傷 (ないそくそくふくじんたいそんしょう)
38 LCL(外側側副靭帯)損傷 (がいそくそくふくじんたいそんしょう)
39 PLS(膝関節後外側支持機構) (ひざかんせつこうがいそくしじきこう)の損傷
40 複合靭帯損傷 (ふくごうじんたいそんしょう)

膝は太ももとすねの骨をつなぐ関節で、膝には内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4つの靭帯が存在します。
内・外側側副靭帯は上下の骨が、横方向、左右にズレる、前・後十字靭帯は前後にズレるのを防止しています。

前十字靭帯は、大腿骨の外側と𦙾骨の内側を結び、𦙾骨が前にズレないように引きつけています。
その目的から、前十字靭帯は、膝関節の安定性を保つ上では1番重要な靭帯です。
膝を伸ばしているとき、この靭帯は、張っている状態です。
交通事故では、膝を伸ばして踏ん張っているときに、膝を捻ると前十字靭帯損傷が起きてしまいます。
バイクを運転中の事故に多く発生し、ほとんどの場合、断裂で、なにかが切れたような、ブチッという音を感じたと、多くの被害者の方から聞いています。
関節内は大量に出血し、パンパンに腫れ上がります。

前十字靭帯損傷は、lachmanテストで診断を行います。
靭帯が断裂していれば、当然、膝がグラつくのですが、そのグラつきの有無や、特性をこのテストで確認します。
膝を15~20°屈曲させ、前方に引き出します。
前十字靭帯断裂のときは、𦙾骨が異常に前方に引き出されます。
lachmanテストで大まかな診断がつきますが、損傷の程度を知るために単純XP撮影、CTスキャン、関節造影、MRI等が実施されます。 MRIがとても有効です。

ストレスXP撮影

𦙾骨を前方に引き出し、ストレスをかけてXP撮影を行います。
断裂があるときは、𦙾骨が前方に引き出されて写ります。
後遺障害診断書には、○mmの前方引き出しを認めると記載をお願いしなければなりません。

関節鏡
関節鏡で直接、前十字靱帯や半月板損傷を確認することが可能です。

受傷直後は、膝を固定し患部を氷水でアイシングします。
アイシングは膝全体に3~4日間続けます。
一度断裂した前十字靭帯は自然につながることはありません。
軽症例に対しては、大腿四頭筋やハムストリング筋などを強化する、保存的治療をおこないます。 

前方引き出しテストで、すねが太腿より前に異常に引き出される状態では、膝崩れを頻発し、半月板損傷を引き起こします。したがって、手術により靭帯の再建をおこないます。

靭帯の再建術は、受傷後1ヶ月程度の安静と可動域訓練の後に、半腱様筋腱、薄筋腱、膝蓋腱の中央3分の1を採取して前十字靭帯を繋ぎ再建します。
再腱後は8~12ヶ月のリハビリが必要となります。
その他では、痛みや腫れがひいた受傷4~6週間後に、関節鏡下において自家靭帯で靭帯再建術を行ないます。

ストレスXP撮影で10㎜以上の動揺性が認められる場合は、手術の対象となりますが、極めて高度な技術を必要とします。
膝関節外来が設置されており、膝の専門医のいる医大系の総合病院を選択しなければなりません。

ACL(前十字靱帯)損傷における後遺障害のポイント

1)通常歩行に、常時、装具の必要性のある場合は、1関節の用廃で8級7号が認定されます。

2)受傷から時間が経過し、陳旧性損傷となっているときは、手術で改善できる保証がありません。
半腱様筋腱、薄筋腱、膝蓋腱の中央3分の1を採取して編み込んで移植する再建術では、さらに、8ヶ月以上の休業が必要となり、現実的な選択肢にはなりません。
この場合は、症状固定として後遺障害の申請を行います。

3)常時、固定装具を装着する必要性のないものは、10級11号が、重激な労働に限って固定装具の必要性のあるものは、12級7号が認定されます。

4)後遺障害の立証には、必ず、ストレスXP撮影が必要となります。
ストレス撮影で、5~8mmの動揺性が認められれば、12級7号、8~10mmで10級11号、12mm以上で8級7号、経験則による目安です。