咽頭は、鼻・口から入った空気が、気管・肺へと向かう通り道と、口から入った食物が、食道から胃へと向かう通り道の交差点であり、空気と食物の通過仕分けをしています。

 

喉頭は気管の入り口にあり、喉頭蓋(喉頭の蓋や声帯)を有しています。

喉頭蓋や声帯は、呼吸するときは開放され、飲食物を呑み込むときには、しっかりと閉ざされて、瞬間的に呼吸を停止して、飲食物が喉頭や気管へ流入することを防止しています。

声帯は、発声では、適度な強さで閉じられ、吐く息で振動しながら声を出します。

喉頭は、呼吸する、飲食物を呑み込む、声を出すといった3つの重要な役目を果たしているのです。

 

咽頭外傷は、広い意味で食道破裂のカテゴリーですが、交通事故では、受傷機転が異なります。

喉頭部に対する強い外力で咽頭外傷が発生し、咽頭部の皮下血腫、皮下出血、喉頭軟骨脱臼、骨折などを発症します。

交通事故では、大きな外力を前方向から喉頭に受けると、後方に脊椎があるため、前後から押しつぶされる形となり、多彩な損傷をきたし、呼吸、発声、嚥下の障害を引き起こします。

 

症状として、事故直後は、破裂した部位の疼痛を訴え、痛みで失神することもあります。

二次的には、食道が破裂することにより、縦隔気腫、縦隔血腫などや、食道内の飲食物が縦隔内に散乱することによる縦隔炎を合併し、それらに伴って、呼吸困難、咳、痰、発熱などの症状が現れます。

頚部や胸部の皮下に皮下気腫を認めることもあります。

重症例では、食道からの出血に伴い貧血、出血性ショック症状を合併することもあり、注意が必要です。

 

※縦隔の内部に空気が漏れ出したものを縦隔気腫、血液が溜まったものを縦隔血腫といい、どちらも胸部の外傷が原因で、気管、食道、血管などから空気や血液が漏れ出して発症しています。

 

交通事故による鈍的外傷では、呼吸路の確保が優先されます。

呼吸困難が起こるようなら、あらかじめ必ず気管切開で気道を確保します。

 

軽いものでは、安静を保ち、声帯浮腫を防止する必要から喉頭ネブライザーを併用しますが、通常は、呼吸が確保されていることを前提に、喉頭内視鏡検査、CTなどの画像診断、喉頭機能、呼吸、嚥下、発声を評価する各種検査が実施されます。

骨折整復は受傷後早期に行う必要があり、軟骨の露出、喉頭を切開、損傷した部位の粘膜縫合や骨折整復などの手術が行われています。

外傷性食道破裂、咽頭外傷における後遺障害のポイント

 

1)外傷性食道破裂を発症することは稀なため、発見が遅れることが多く、外傷性食道損傷の死亡例では、縦隔炎から敗血症などの重篤な状態となるものがほとんどです。

 

※敗血症

縦隔内に食物残渣が散らばると、感染症である縦隔炎を発症します。

縦隔炎から血液中に病原体が入り込んで、重篤な症状を引き起こす症候群を敗血症と言います。

 

2)外傷性食道破裂後に想定される後遺障害は、瘢痕性食道狭窄による嚥下障害です。

 

飲食物を認識し、口に入れ、噛んで、飲み込むまでの一連の作業にあって、飲み込むことを嚥下と言うのですが、飲み下すことに障害を残すのが嚥下障害です。

 

そしゃく・言語の機能障害

嚥下障害はそしゃく障害を準用しています。

1級2号 そしゃく及び言語の機能を廃したもの

そしゃく機能を廃したもの=流動食以外は摂取できないもの

3級2号 そしゃく又は言語の機能を廃したもの

言語の機能を廃したもの=4種の語音の内、3種以上の発音不能のもの

4級2号 そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの

そしゃく機能に著しい障害を残すもの=粥食または、これに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

6級2号 そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの

言語の機能に著しい障害を残すもの=4種の語音の内、2種の発音不能のもの又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

9級6号 そしゃくおよび言語の機能に障害を残すもの

そしゃくの機能に障害を残すもの=固形食物の中に咀嚼ができないものがあること、または、そしゃくが十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できるもの

10級3号 そしゃくまたは言語の機能に障害を残すもの

言語の機能に障害を残すもの=4種の語音の内、1種の発音不能のもの

 

※綴音機能

綴音(てつおん)とは、2つ以上の単音が結合してできた音のことで、例えば、事故は、J・I・K・Oの4つの短音に分解できます。単音とは、言語音声を構成する最小単位です。

 

そしゃくとは、噛み砕くことですが、そしゃくの機能障害は不正な噛み合わせ、そしゃくを担う筋肉の異常、顎関節の障害、開口障害、歯牙損傷等を原因として発症します。

 

※そしゃくの機能を廃したもの

味噌汁、スープ等の流動食以外は受けつけないものであり、3級2号が認定されます。

 

※そしゃくの機能に著しい障害を残すもの

お粥、うどん、軟らかい魚肉、またはこれに準ずる程度の飲食物でなければ噛み砕けないものであり、 6級2号が認定されることが予想されます。

 

※そしゃくの機能に障害を残すもの

ご飯、煮魚、ハム等は問題がないが、たくあん、ラッキョウ、ピーナッツ等は噛み砕けないものであり、 10級2号が認定されることが予想されます。

いずれも、先の原因が医学的に確認できることを認定の条件としております。

 

※開口障害

開口障害を原因として、そしゃくに相当の時間を要するときは、12級相当が認定されることが予想されます。

開口の正常値は、男性は55mm、女性は45mmで、正常値の2分の1以下で開口障害と認められます。

 

嚥下障害とは、食物を飲み下すことに困難が生じる障害です。

食道の狭窄や舌の異常を原因として発症するのですが、多くは、頭部外傷後の高次脳機能障害で、咽喉支配神経が麻痺したときに発症します。

嚥下障害の後遺障害等級は、咀嚼障害の程度を準用して定めています。

先の等級表ですが、そしゃくを嚥下と読み替えて、判断してください。

さらに、そしゃくと嚥下障害は併合されることはなく、いずれか上位の等級が選択されています。

 

 

3)嚥下障害の立証

瘢痕性食道狭窄は、耳鼻咽喉科における喉頭ファイバー(内視鏡検査)で立証しています。

実際に飲食物がどのように飲み込まれるかを調べるには、造影剤を用いて、嚥下状態をXP透視下に観察する嚥下造影検査で立証しています。

 

舌の運動性は口腔期の飲食物の移動に、咽頭の知覚は咽頭期を引き起こすのに重要です。

下咽頭や喉頭の嚥下機能を確認するには、実際に食物などを嚥下させて誤嚥などを検出する、嚥下内視鏡検査もあります。

 

4)咽頭外傷では、嚥下障害以外にも、呼吸障害や発声障害を残すことが予想されます。

呼吸障害の立証は、「気管・気管支断裂」 のところで説明しています。

ここでは、発声障害の検査による立証を説明します。

 

①代表的なものは、喉頭ファイバースコピー検査です。

声帯のある喉、つまり喉頭を見る一般的な検査方法です。

椅子に座った状態で、直径3mmの軟性ファイバースコープを鼻から挿入して検査が行われます。

上咽頭、中咽頭、下咽頭、声帯、喉頭蓋、披裂部など、喉の重要部分について形態、色調、左右の対称性、運動障害の有無を画像で立証しなければなりません。

 

②4種の構音の内、どれが発音不能かは、音響検査と発声・発語機能検査を受け、検査データを回収して立証しています。

 

③かすれ声、嗄声は、喉頭ストロボスコープで立証しています。

喉頭ストロボスコープ

これは、高速ストロボを利用して声帯振動をスローモーションで観察する装置です。

スローモーションで見ることで、声帯の一部が硬化している、左右の声帯に重さや張りの違いが生じておこる不規則振動を捉え、検査データにより、嗄声を立証します。

嗄声を立証すれば、12級相当が認定されることが予想されます。

 

そしゃくと言語の機能の両方に著しい障害を残しているときは、立証により4級2号が認定されることが予想されます。

そしゃくについては、喉頭ファイバー検査で、瘢痕性食道狭窄などの異常所見を発見しなければなりません。その上で、実際の嚥下障害は、嚥下造影検査で具体的に立証することになります。

 

次に、言語については、喉頭ファイバースコピーで仮声帯、声帯、その周辺部の異常所見の発見、発声・発語機能検査、音響検査で言語障害のレベルを立証することになります。異常所見が認められれば、4級2号が認定され得ます。