53 手根骨の骨折 TFCC損傷

42 手の仕組み
43 右手首の腱鞘炎と前腕部の炎症
44 手根骨の骨折 有鈎骨骨折 (ゆうこうこつこっせつ)
45 手根骨の骨折 有頭骨骨折(ゆうとうこつこっせつ)
46 手根骨の骨折 舟状骨骨折 (しゅうじょうこつこっせつ)
47 手根骨の骨折 月状骨脱臼 (げつじょうこつだっきゅう)
48 手根骨の骨折 .舟状・月状骨間解離 (しゅうじょう・げつじょうこつかんかいり)
49 手根骨の骨折 三角・月状骨間解離 (さんかく・げつじょうこつかんかいり)
50 キーンベック病=月状骨軟化症 (げつじょうこつなんかしょう)
51 手根骨の骨折 手根不安定症 (しゅこんふあんていしょう)
52 手根骨骨折のまとめ
53 手根骨の骨折 TFCC損傷
54 手指の各関節の側副靭帯損傷
55 手指伸筋腱損傷 (しんきんけんそんしょう)
56 手指の伸筋腱脱臼 (しんきんけんだっきゅう)
57 手指の屈筋腱損傷 (くっきんけんそんしょう)
58 手指の脱臼と骨折 中手骨頚部骨折 (ちゅうしゅこつけいぶこっせつ)
59 手指の脱臼と骨折 中手骨基底部骨折 (ちゅうしゅこつきていぶこっせつ)
60 手指の脱臼と骨折 中手骨骨幹部骨折 (ちゅうしゅこつこつかんぶこっせつ)
61 手指の脱臼と骨折 ボクサー骨折
62 手指の脱臼と骨折 PIP関節脱臼骨折
63 手指の脱臼と骨折 マレットフィンガー=槌指
64 手指の脱臼と骨折 母指CM関節脱臼
65 クロスフィンガー
66 突き指のいろいろ
67 手指の靱帯・腱損傷および骨折における後遺障害のポイント
68 手指の欠損について

 

TFCC(Triangular Fibrocartilage Complex、三角線維軟骨複合体)は、手関節の小指側、橈骨・尺骨・手根骨の間に囲まれた三角形の部分にあり、橈尺骨のスタビライザーの役目、回内・回外時の尺骨遠位端のクッションやベアリングとして働いています。
TFCCは、関節円板といわれるもので、骨では硬すぎるので、成分は、三角線維軟骨複合体で、膝の半月版に相当する軟骨組織です。
交通事故で転倒した際に、手をつくことで多発しています。
(TFCCは、尺骨三角骨靭帯、尺骨月状骨靭帯、掌側橈尺靭帯、背側橈尺靭帯、関節円板、尺側側副靱帯、三角靱帯の複合体です。)
現在では、専門医であれば、治療法は確立されています。
TFCC 損傷と診断されたときは、受傷直後は、安静、消炎鎮痛剤の投与、サポーターやギブスなどを用いて手関節を保存的に治療します。
この治療で70%の被害者の方は改善が得られています。
サポーターやギブスによる固定療法は、原則として3ヶ月であり、3ヶ月が過ぎても症状が改善されないときは、手術が適用されています。
多くは、関節鏡視下手術により、損傷等した靱帯やTFCCの縫合・再建術や滑膜切除術が実施されていますが、TFCCの損傷レベルによっては、切開手術となります。
尺骨突き上げ症候群によりTFCCを損傷しているときは、尺骨を橈骨と同じ高さにする尺骨短縮術が行われており、これは、切開手術です。
高齢者では、TFCC が摩耗しているために、手術が不可能なこともあります。
手関節にステロイド注射を行う治療法もありますが、関節内にステロイドを注入すると軟骨を痛めることがあり、MRI で十分に評価をした上で注入されています。

TFCC損傷における後遺障害のポイント

1)実際に、事故直後にTFCC損傷と診断され、サポーターやギブス固定、さらには関節鏡視下手術により改善が得られる被害者の方は、一握りです。
TFCCは三角線維軟骨複合体であり、XPで確認できません。
TFCC損傷以外に、頚部捻挫があれば、上肢~手指のだるさ、痺れ、痛みを訴える被害者の方もいらっしゃいます。

2)受傷直後から小指側の手首の痛み、手関節の可動域制限、握力低下を主治医に訴えていたかがポイントです。
これらの自覚症状がカルテに記載されている場合、TFCC損傷を立証すれば、間に合います。
記載がなくても、2ヶ月であれば、主治医も修正に応じてくれる可能性があります。
しかし、4ヶ月以上が経過していれば、無理でしょう。
最近も、名古屋地裁でTFCC損傷と交通事故の因果関係が否定されました。
初診から4ヶ月通院した整形外科の医師が、頑としてTFCC損傷を否定したからです。
損保料率算出機構調査事務所も、因果関係で非該当としています。
3)日本手外科学会でも、鏡視下での手術は高度な技術が要求されること、そして、TFCC損傷の手術を行える専門医が少ないことを問題提起しています。

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