肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに上腕骨がぶら下がっている頼りなげなもので、関節部には、骨の連結がなく、大きな可動域を有しているのですが、そのことで脱臼しやすい構造となっています。
バイクや自転車を運転中の衝突等で、転倒した際に体を支えようとした腕が、横後ろや上方に無理に動かされたときに、上腕骨頭が不安定となり、関節面を滑って脱臼となります。
また、転倒した際に、肩の外側を強く打ったとき、腕を横後ろに持っていかれたときなどにも生じます。脱臼の多く、90%以上は、上腕骨頭が身体の前面に移動する前方脱臼です。
前方脱臼以外にも、転倒した際に、体の前方に腕を突っ張ったとき、肩の前方を強く打撲したときに生じる後方脱臼、上腕を横方向から上に無理に動かされたときに生じる下方脱臼があります。

治療では、観血術の選択は少なく、上記の外旋位固定が3週間続けられます。

肩関節脱臼における後遺障害のポイント

1)合併症に注意
肩関節脱臼となると、若年者では、関節包が肩甲骨側から剥がれ、または破れ、中年以降では、腱板=関節を包む筋肉が上腕骨頭に付いている部位で断裂することがあります。
脱臼に伴い、肩・腕・手に行く上腕神経叢が損傷することもあり、中年以降では高い確率で起こります。
また、上腕骨頭の外側や前方にある骨の突起=大結節や小結節の骨折をしばしば伴います。
少ない症例ですが、後方脱臼は、専門医以外では、60%程度が見逃されると言われています。
したがって、最初の治療先で肩の痛みの原因に対する十分な説明がされず、痛みが持続するときは、改めて専門医を受診しなければなりません。
合併症を伴うときは、12級6号の限りではなく、10級10号も予想されます。
一度外れても簡単にもどる亜脱臼や数分間腕全体がしびれたようになるデッドアーム症候もあります。本質的には脱臼と同じ損傷ですが、後遺障害を残しません。
2)立証
骨と腱板や関節唇の軟部組織における器質的損傷を立証するには、CTとMRI撮影が欠かせません。
CTでは、関節の安定性を重視する必要から、バンカート部位=肩甲骨関節窩下縁前方、ヒル・サックス部位=上腕骨骨頭後外上部の撮影が必要です。