10 頭部外傷 外傷性脳室出血
脳の中心部にある、脳室と呼ばれる空洞に出血が生じたものです。
なお、中央部の白く細長い像は、脳室内出血を抜き取るドレーンチューブです。
脳室は脳脊髄液で満たされており、その脳脊髄液はいくつかの脳室を順に流れていきます。
脳室と脳室の間は非常に狭い孔や通路でつながっているので、脳室内出血によって脳脊髄液の通り道が詰まると、上流にある脳室が急速に拡大して周囲の脳を圧迫します。これを急性水頭症と呼び、徐々に流れが滞り、脳室が大きくなると正常圧水頭症と診断されています。
脳組織の挫滅=脳挫傷に伴って脳室の壁が損傷を受け、そこからの出血が脳室内にたまって脳室内出血に至ります。
急性水頭症では、脳室の拡大により頭蓋骨の内圧が高まり、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などが認められます。
さらに、脳室の拡大による圧迫が脳ヘルニアの状態にまで進行すると死に至ります。
急性水頭症に対しては、局所麻酔をかけて頭蓋骨に小さな孔をあけ、脳室にチューブを挿入し、脳脊髄液と脳室内の出血を取り除く脳室ドレナージ術が、緊急に実施されています。