5 眼窩底骨折 (がんかていこっせつ)
眼窩下壁が骨折して、眼窩脂肪が飛び出している、
ブローアウト、吹き抜け骨折とも呼ばれる、特殊な顔面骨の骨折です。
眼球が入っている骨の窪みは眼窩といい、この眼窩の入り口部分は頑丈にできていますが、その奥の眼窩壁の鼻側~下壁部分は、薄い骨でできています。
目に強い衝撃が加わると、眼の周囲の骨は持ちこたえても、弱い眼窩壁が骨折するのです。
骨折部から眼窩内の脂肪組織や眼を動かす筋肉などがはみ出すことにより、
①眼球陥没
②眼の動きが悪くなり、物が二重に見える複視
③眼窩下壁の知覚神経損傷では、頬~上口唇の感覚が麻痺
CTで、骨折の状況を確認し、眼球陥没や眼球運動障害の程度から、手術が判断されています。
骨折部で眼を動かす筋肉が挟み込まれているときは、緊急手術で対応します。
眼窩壁の骨折があっても、複視や眼球陥没などの症状が無ければ手術はしません。
複視の多くは、骨折部の腫れや出血が吸収されると改善してきます。
訴えが複視のみで、CTで問題がないときは、改善状況を見てから手術の可否判断がなされます。
眼の落ち窪み、眼球陥没では、手術が選択されています。
全身麻酔下で、骨折した骨を元に戻して固定しますが、薄い骨が粉砕されて整復できないこともあり、そのときは、自分の骨や軟骨、シリコン、セラミック、チタン材などの人工材を骨折部に移植します。
眼窩底骨折における後遺障害のポイント
1)眼窩底は紙に例えられるほど厚みが薄く、、篩骨は、外傷によって容易に骨折するのですが、一方では、これにより、眼球破裂を回避しているのです。
しかし、眼窩底の重度な粉砕骨折では、修復がなされても、複視の後遺障害を残します。
2)複視は、正面視での複視と左右上下の複視の2種類があります。
検査には、ヘスコオルジメーターを使用し、複像表のパターンで立証します。
正面視の複視は、両眼で見ると高度の頭痛や眩暈が生じるので、日常生活や業務に著しい支障を来すものとして10級2号の認定がなされます。
左右上下の複視は正面視の複視ほどの大きな支障は考えられないのですが、軽度の頭痛や眼精疲労は認められます。この場合は13級2号の認定がなされます。