2 頭部外傷 高次脳機能障害認定の3要件

 

1)頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること

①当初の意識障害、半昏睡~昏睡で、開眼・応答しない状態、JCS3~2桁、GCS12点以下が少なくとも6時間以上続いていることが確認できる症例
②健忘あるいは軽度意識障害、JCS1桁、GCS13~14点が、少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例

意識障害 JCS
Ⅰ覚醒している
(1桁の点数で表現)
0 意識清明
1(Ⅰ-1)見当識は保たれているが意識清明ではない
2(Ⅰ-2)見当識障害がある
3(Ⅰ-3)自分の名前・生年月日が言えない
Ⅱ刺激に応じて一時的に覚醒する
(2桁の点数で表現)
10(Ⅱ-1)普通の呼びかけで開眼
20(Ⅱ-2)大声で呼びかける、強く揺するなどで開眼
30(Ⅱ-3)痛刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼
Ⅲ刺激しても覚醒しない
(3桁の点数で表現)
100(Ⅲ-1)痛みに対し払いのけるなどの動作をする
200(Ⅲ-2)痛刺激で手足を動かす、顔をしかめたりする
300(Ⅲ-3)痛刺激に対して全く反応しない

この他、R(不穏)I(糞便失禁)A(自発性喪失)などの付加情報をつけてJCS200-Iなどと表す。

乳幼児意識レベルの点数評価 JCS
Ⅰ刺激しないでも覚醒している
(1桁の点数で表現)
1あやすと笑う。ただし不十分で声を出して笑わない
2あやしても笑わないが視線は合う
3母親と視線が合わない
Ⅱ刺激すると覚醒する
(2桁の点数で表現)
10飲み物を見せると飲もうとする。
あるいは乳首を見せれば欲しがって吸う
20呼びかけると開眼して目を向ける
30呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する
Ⅲ刺激しても覚醒しない
(3桁の点数で表現)
100痛刺激に対し、払いのけるような動作をする
200痛刺激で少し手足を動かす、顔をしかめたりする
300痛刺激に対して全く反応しない
GCS
E○+V○+E○=合計○点と表現
正常は15点満点、深昏睡は3点、点数は小さいほど重症
開眼機能E
(Eye opening)
4自発的に、または普通の呼びかけで開眼
3強く呼びかけると開眼
2痛刺激で開眼
1痛刺激でも開眼しない
言語機能V
(Verbal response)
5見当識が保たれている
4会話は成立するが見当識は混乱
3発語は見られるが会話は成立しない
2意味のない発声
1発語みられず
運動機能M
(Motor response)
6命令に従って四肢を動かす
5痛刺激に対して手で払いのける
4指への痛刺激に対して四肢を引っ込める
3痛刺激に対して緩徐な屈曲運動
2痛刺激に対して緩徐な伸展運動
1運動みられず
PTA、外傷性健忘について
重傷度 PTAの持続
わずかな脳振盪 0~15分
軽度の脳振盪 1.5~1時間
中程度の脳振盪 1~24時間
重度の脳振盪 1~7日間
非常に重度な脳振盪 7日間以上

JCSは3桁が重度な意識障害で、GCSは点数が低いほど重度な意識障害と憶えてください。

高次脳機能障害における後遺障害のポイント

1)入口部分の3つの要件の中では、意識障害所見が最も重要となります。
つまり、意識障害のレベルが認定等級に直結しているのです。

脳神経外科医は、MRIでびまん性軸索損傷の所見が得られなくても、意識障害のレベルで、それらの傷病の存在を推定し、診断しています。
半昏睡~昏睡状態が6時間以上継続していれば、立証上は、何ら問題はありませんが、5、7、9級では、外傷後健忘や軽度の意識障害であり、担当医が、入院中の被害者をつぶさに検証して、その詳細を把握することは、現実問題として困難なものと思われます。
実態に反して、3、4日で意識清明とされれば、その後、具体的に症状を立証しても高次脳機能障害は入口段階で否定されることになります。

2)想定される4つのパターン

意識障害 傷病名 画像所見 高次脳機能障害
1
2 ×
3 ×
4 × × × ×

2の場合は、立証の可能性があります。
3の場合は、高次脳機能障害の認定は極めて困難となります。
4の場合は、高次脳機能障害として審査されることはありません。
なお、軽度脳損傷、MTBIは4に該当し、高次脳機能障害として評価されません。

頭部外傷 高次脳機能障害認定の3要件は、
1)頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること
2)頭部外傷を示す以下の傷病名が診断されていること
3)上記の傷病名が、画像で確認できること

頭部外傷の傷病名
脳挫傷 急性硬膜外血腫
びまん性軸索損傷 急性硬膜下血腫
びまん性脳損傷 外傷性くも膜下出血
外傷性脳室出血 低酸素脳症

高次脳機能障害に特有の、記憶喪失、記憶回路の損傷、遂行機能の障害、失語、聴覚、嗅覚の脱失、言語理解や認知の低下などは、全て、傷病名を出発点としているため、傷病名ごとの特徴を理解することが必要となります。

本ホームページでは、頭部外傷を代表する11の傷病名について、画像を明示して説明します。

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